つくる旅
織物

奥会津昭和からむし織

Oku-Aizu Showa Karamushi-ori

福島県

奥会津昭和からむし織は、福島県大沼郡昭和村で受け継がれてきた、からむし(苧麻)を素材とする伝統的な織物。清涼感のある薄手の布地と、手仕事による繊細な風合いが特徴。

歴史

からむしは古来より日本各地で衣料用植物繊維として用いられてきたが、会津地方、とりわけ現在の昭和村周辺は有数の産地として長く知られてきた。村ではからむしの栽培から繊維の採取・精製、糸づくり、そして織りに至る一連の工程が地域ぐるみで継承されており、厳しい山間の環境の中で農業と一体となった生業として根付いてきた。近世には会津藩の政策のもと生産が奨励・管理され、越後上布などの高級麻織物の原糸供給地としても重要な役割を果たした。近代以降は合成繊維の普及や過疎化によって生産者が激減したが、村をあげての後継者育成や技術保存の取り組みが続けられてきた。こうした努力が評価され、国の伝統的工芸品に指定されて産地ブランドとしての認知が高まっている。

素材

主原料は、昭和村内で栽培されるからむし(苧麻/Boehmeria nivea)の茎から採取した靱皮繊維。からむしは多年草で、夏に刈り取った茎の皮を剥ぎ、水に浸して柔らかくしたのち、手で丁寧に繊維を引き出す「苧引き(おひき)」という工程を経て素材が得られる。昭和村産のからむし繊維は光沢があり、引張強度が高く、吸湿・速乾性に優れるのが特徴で、夏の衣料に適した素材として高く評価される。染色には天然染料が用いられることも多く、植物由来の柔らかな色調が布地の風合いをいっそう引き立てる。

技法

制作工程はからむしの栽培から始まり、苧引き・糸績み(いとうみ)・整経・機織りまで、すべての工程が手作業で行われる。糸績みでは引き出した繊維を指先で縒り合わせながら長い糸へとつなぎ、均一な細さに整える高度な技術が求められる。織りには主に高機(たかはた)が用いられ、平織りや絣(かすり)などの技法で緻密な布が仕上げられる。絣織りでは織る前に糸を部分的に防染・染色して文様を作り出す「括り」の技術が重要で、幾何学的な模様が特徴的な意匠として現れる。一反の布を仕上げるまでに数週間から数か月を要することも珍しくなく、各工程に熟練した職人の手わざが不可欠である。

風土と工芸

昭和村は奥会津の山間部に位置し、冬は豪雪、夏は高温多湿となる内陸性気候を持つ。この湿潤な夏の気候がからむしの生育を促し、良質な繊維の収穫を可能にしている。また、清冽な山の水は繊維の精製・染色工程にも欠かせない資源となっている。

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