つくる旅
陶磁器

大堀相馬焼

Obori-Soma Ware

福島県

大堀相馬焼は福島県浜通り地方を発祥とする陶磁器で、「青ひび」と呼ばれる独特の貫入釉、二重構造の湯呑み、そして躍動する馬の絵付けを三大特徴とする。

歴史

大堀相馬焼の起源は江戸時代初期にさかのぼる。現在の福島県双葉郡浪江町大堀地区において、相馬藩の保護のもとで窯業が始まったとされる。相馬藩は廃藩置県まで一貫してこの焼き物を庇護し、藩の御用窯として発展した。産地では多くの窯元が軒を連ね、東北地方を代表する民窯として広く流通した。しかし、1970年代以降の産業構造の変化により窯元数は減少傾向にあった。さらに2011年の東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故の影響により、大堀地区そのものが帰還困難区域に指定され、多くの窯元がやむなく福島県内外へ避難・移転を余儀なくされるという未曾有の困難に直面した。現在は各地に離散した窯元が技術と伝統の継承に取り組みながら、産地の復興を目指して活動を続けている。1978年に国の伝統的工芸品に指定された。

素材

陶土灰釉

大堀相馬焼には、地元・大堀地区周辺で採取されてきた陶土が伝統的に用いられてきた。この土は粒子が細かく、成形性に優れる一方で、焼成時の収縮率が大きいという特性を持つ。この高い収縮率こそが、釉薬との膨張差を生み出し、大堀相馬焼最大の特徴である「青ひび(貫入)」を生じさせる要因となっている。釉薬には主に灰釉系のものが用いられ、還元焼成によって青みを帯びた独特の色調が生まれる。2011年の原発事故以降、原産地での採土が困難になったため、各窯元は代替土の研究・開発を進めながら、伝統の風合いを再現する努力を続けている。

技法

大堀相馬焼を特徴づける技法は主に三つある。第一は「青ひび(貫入)」で、素地と釉薬の熱膨張率の差を巧みに利用し、焼成後に釉面に無数の細かいひびを意図的に生じさせる技術である。第二は「二重焼き(二重構造)」で、湯呑みなどの器を内側と外側の二重構造に成形することで、優れた保温性と持ちやすさを実現する。この技法は大堀相馬焼の代名詞とも言える独自の工夫である。第三は「走り駒」の絵付けで、相馬藩の野馬追いの伝統に由来する躍動感ある馬の図柄を、筆で器面に描き込む。これら三つの要素が組み合わさることで、大堀相馬焼の揺るぎない個性が形成されている。

風土と工芸

大堀地区を含む福島県浜通り地方は、太平洋に面した比較的温暖な気候であるが、原料となる良質な陶土が地域の地質から産出されたことが、この地で窯業が根付いた大きな要因の一つである。

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